ヤサオトコ

 男はベンチに腰を下ろした。


 「腰を下ろさないか」
 「ああ」


 栗崎もベンチに腰を下ろした。


 「そんなにじろじろ見るなよ」

 男が栗崎をたしなめた。


 「冗談だろう」
 「冗談なもんか」


 「どうして」
 「派遣切りで首だよ。不景気な時代になると、いつも真っ先に首を切られるのは俺たちだ」


 「派遣をしていたのか」
 「電機メーカーで働いていた。リストラで、職も、寮も、みんな無くしてしまったよ」


 リストラの犠牲者がここにも一人いた。
 栗崎は沈んだ表情で、男の話に耳を傾けた。







 
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