ヤサオトコ

 「ネットカフェには、よく行くのか」

 栗崎が男に尋ねた。


 「少し前までは、住みかにしていた。手持ちが少なくなってきたので、今では行かないけど」


 「じゃ、今日は?」
 「今日は特別だ。と言うより最後かな。それが、火事になるなんて。ついてないよ」


 「特別?いい就職先でも見つけたのか」
 「そうじゃない。お宅には、関係ないよ」


 男は寂しそうな表情をしていた。
 男が石鹸の箱を取り出した時、バッグの端から、紐がはみ出した。
 栗崎は、その紐が妙に気になっていた。



 ピンク色の着物の紐。



 男とその紐が、何か不釣合いだった。







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