ヤサオトコ

 「その紐は?」


 栗崎が尋ねた。


 「この紐か。お袋の形見だ。それが、どうかしたか」


 男が首を傾げた。


 「いいや。別に」


 (本当に母親の形見だろうか)


 (本当なら、なぜ、この男は、紐を持ち歩いているのだろうか)


 栗崎は男と紐の関係を考えていた。


 「石鹸が無くなった時、俺も亡くなる・・・」


 栗崎は心の中で男の言葉を反芻した。


(まさか、自殺?それは、無い、無い)


(だが、街村だって、リストラを苦に自殺したじゃないか)


 栗崎の推理が、不吉な男の未来を示している。


 「金が底を尽いたのか」


 栗崎は、思い切って鎌を掛けてみた。


 
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