ヤサオトコ
「えっ・・・」
男が驚いた。
「ふと、そう思ったんだ」
「・・・」
男はバッグの中から、タオルを取り出した。そして、黙ってベンチから立ち上がると、10m程離れた水道へ。
この水道は、上部が噴水形式。
下部が栓を捻っている間だけ水が流れる水道だ。
男は右手で栓を捻り、左手で頭の毛を水で乱暴に洗い出した。
「ああ、さっぱりした」
男が濡れた髪をタオルで拭いている。
「頭の毛を洗い出したら、あの騒ぎだ。髪も濯がずに飛び出してしまった。特別の日だと言うのに。本当に、付いてないよ」
「寒くないのか」
「ああ、慣れているから」
栗崎はタオルで髪を拭いている男を、ぼんやりと見詰めていた。