ヤサオトコ

 「俺の友人が自殺したんだ」

 栗崎が苦しい胸の内を吐露した。


 「・・・」
 「リストラを苦にしてね。今日が葬式だった。なぜ自殺なんか・・・」


 「リストラの経験の無い者には、わからないだろうな」


 男がタオルの手を止めて、ぽつりと言った。


 「俺だって、課長からリストラを宣告されている」
 「お宅もか。そうだったのか」


 男は、栗崎が同類だと知って安堵している様子。



 (特別の日とは、あの世に行く日じゃないのか。きっと、そうだ)


 栗崎は心の中で、特別の日の意味合いを探っていた。


 「間違っていたらご免」
 「何が」


 
 「あんた、死ぬつもりだったのか」



 「どうして俺が」
 「あの紐を見てピンと来たんだ」


 男はタオルに顔を埋めた。






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