ヤサオトコ


 男はタオルから顔を上げると、重い口を開いた。


 「こんなはずじゃなかった。こんなはずじゃなかったんだ」
 「・・・」


 「職さえ探す事が出来れば・・・。アパートを見つけ、普通の生活に軌道修正する事が出来たのに・・・畜生!甘かった」
 「今からでも出来るだろう」


 「あんた、現実の厳しさをわかっていない。もう、限界なんだ」
 「限界?」


 「金が尽きたんだ。これから冬なのに、金無しで乗り越えれると思うか」
 「・・・」


 「到底、乗り越えられない。だから、お袋の所に行こうと思ったんだ」
 「あんた、故郷はどこだ」


 栗崎は次の言葉に困った。それで、話題を変えた。







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