ヤサオトコ

 「岡山だ」

 男の故郷は岡山だった。


 「近いじゃないか」
 「俺には遠いよ」


 「誰かいるのか」
 「親父と兄がいる」


 「帰らないのか」
 「さっき、金が尽きたと言っただろう」


 「岡山なら1万円もあれば帰れるだろう」
 「ああ」


 「それくらいなら、俺が出してもいい」
 「施しか」


 「施しをするんじゃない。貸すんだ」
 「見ずしらずの人間にか」


 「そうだ」
 「どうして」


 「リストラを苦に死ぬなんて、余りにも惨めだよ」
 「・・・」


 男は無言のまま下を向いた。







< 133 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop