ヤサオトコ
「岡山だ」
男の故郷は岡山だった。
「近いじゃないか」
「俺には遠いよ」
「誰かいるのか」
「親父と兄がいる」
「帰らないのか」
「さっき、金が尽きたと言っただろう」
「岡山なら1万円もあれば帰れるだろう」
「ああ」
「それくらいなら、俺が出してもいい」
「施しか」
「施しをするんじゃない。貸すんだ」
「見ずしらずの人間にか」
「そうだ」
「どうして」
「リストラを苦に死ぬなんて、余りにも惨めだよ」
「・・・」
男は無言のまま下を向いた。