ヤサオトコ


 「もしもし野乃絵です。栗崎さん、いま少しいい」


 電話は、池見房江の娘、野乃絵からだった。


 「ええ」

 仕方なく栗崎が答えた。


 「今から、会えない。渡したいものがあるの」
 「またですか」


 「えっ、私、今が始めてよ」
 「いや、そうでしたね。チョコレートですか」


 「いいえ、絵です。先日、褒めて頂いたので。栗崎さんの為に描いてみたの」


 野乃絵が弾んだ声で言った。


 「絵ですか。何の絵です」
 「それは、会った時のお楽しみ。会えるの」
 「ええ。いいですけど」


 野乃絵は房江の娘なので、栗崎は無下に断る事が出来なかった。






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