ヤサオトコ
栗崎は、ウエイトレスを見て手を上げた。
「この絵、もし良かったら、お店に飾って下さい」
栗崎が絵をウエイトレスに強引に手渡した。
ウエイトレスは困った顔をしている。
栗崎はその顔を無視して店の外に出た。
今日は、バレンタインデー。
外は、人、人、人の波。
栗崎には、この後、無性に寄りたい所があった。
鮮やかな蛸の絵を脳裏に思い浮べながら、栗崎は歩を速めていた。
『好かん蛸』から、不機嫌な顔をした男が一人、店を出て来た。
(あっ、結婚を申し込んだ男に違いない)
栗崎は男の事が何故か気になっていた。