ヤサオトコ

 (これで良かったのか)


 栗崎が心の中で呟いた。


 (明日で、千通とはお去らばだ。
 これで、田原の顔を見る事も無いだろう。

 良かった。
 これだけでも、大いに良かったじゃないか)


 栗崎は自分で自分を納得させていた。


 (お母さんは寝たみたいだ)


 栗崎が房江の寝顔を覗き込んだ。


 (顔が近すぎる。大画面並みのどアップだ)


 (見たくない)


 (皺に埋もれてる~)


 栗崎は房江の顔が見えないように、仰向けに寝返った。
 天井の木目が、いろんな表情をしている。


 「母は寝ましたか」


 横から、野乃絵の声がした。






 
< 198 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop