ヤサオトコ
「安心かな」
栗崎が、小さく呟いた。
「安心・・・ですか」
野乃絵が、安心という言葉を噛み締めた。
「そうだと思います」
「それは、親に求めるものではないのですか」
野乃絵が小さな声で囁いた。
「・・・」
「それなら、私でも良かったのではないのですか」
「・・・」
栗崎は、その質問には答えずに、目を閉じていた。
野乃絵が栗崎の手の上に、自分の手を重ねた。
野乃絵の手は、温かった。
栗崎は自分の手を引っ込めた。
野乃絵の手は、そのまま動かなかった。
「異常よ」
野乃絵が栗崎に聞こえるように言った。
栗崎は何も言わなかった。
その夜。
野乃絵は、眠れない苦しい時を過ごしていた。
静寂の中に、房江の寝息だけが、規則正しく響き渡っていた。