ヤサオトコ
「あなただって、妻より母の方がいいはずよ」
「僕は、妻でいい」
栗崎が毅然とした態度で言った。
「本気で言っているの」
「本気だ」
「呆れた人ね。母は60のお婆ちゃんよ。生理もない、女を卒業した人よ。そんな人を本気で選ぶと言うの」
「ああ、本気だ」
「意気地無し!あなたって最低ね。見損なったわ。ほんとう最低よ」
野乃絵は捨て台詞を残し、駆け出して行った。
栗崎は野乃絵の後ろ姿を、憂鬱な気分で見送っていた。