ヤサオトコ
 
 女は公園の入り口に向う途中で立ち止まり、二人の様子を窺っていた。
 男が逃げて行くのを見届けると、女が栗崎に近寄って来た。


 「ありがとう」


 女は薄汚れた顔に、にこっと可愛い笑みを浮かべた。


 「どうして命を懸けてまで、助ける必用があったんだ。こんな薄汚れた女なんか、どうなってもいいだろう。なあ、どうしてなんだ」


 女が栗崎に聞きただした。

 「別に」

 栗崎がぶっきら棒に答えた。

 「じゃあな」

 栗崎は女の相手をせず、先程いたベンチに戻ろうとした。


 「待てよ。頼むから答えてくれよ」
 「そんなに知りたいのか。じゃ、教えてやろう。どうせ、後何日かで、俺は死ぬ事になる。後、何日後に死ぬのも、今死ぬのも同じだと思ったからだ」


 栗崎が心の内を正直に話した。







< 236 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop