ヤサオトコ
女は公園の入り口に向う途中で立ち止まり、二人の様子を窺っていた。
男が逃げて行くのを見届けると、女が栗崎に近寄って来た。
「ありがとう」
女は薄汚れた顔に、にこっと可愛い笑みを浮かべた。
「どうして命を懸けてまで、助ける必用があったんだ。こんな薄汚れた女なんか、どうなってもいいだろう。なあ、どうしてなんだ」
女が栗崎に聞きただした。
「別に」
栗崎がぶっきら棒に答えた。
「じゃあな」
栗崎は女の相手をせず、先程いたベンチに戻ろうとした。
「待てよ。頼むから答えてくれよ」
「そんなに知りたいのか。じゃ、教えてやろう。どうせ、後何日かで、俺は死ぬ事になる。後、何日後に死ぬのも、今死ぬのも同じだと思ったからだ」
栗崎が心の内を正直に話した。