ヤサオトコ
「盗まなくても、これだけの大都会なら、十分に食っていけるよ」
「・・・」
「嘘だと思っているのか」
「・・・」
「嘘だと思うなら一緒に暮らしてみるか」
女が妙に真顔で言った。
「盗みをしないと約束出来るか」
栗崎も真顔になった。
「約束するよ」
「それなら交渉成立だ」
「嬉しい!」
女が心底嬉しそうな表情をした。
「私の名前は、川井郁。あんたの名前は」
郁は栗崎の名前が知りたかった。それで、自己紹介をした。
「俺?俺の名前は、栗崎晃司。よろしく」
「こちらこそ、よろしく」
二人は互いに軽く頭を下げた。