ヤサオトコ

 こうした奇妙な縁で、二人のホームレス生活が始まった。


 「俺はそこのベンチに寝るつもりだったが、お前はどこで寝泊りしているのだ」


 栗崎がベンチのある方を指差した。


 「郁と呼んでよ。私も晃司と呼ぶから。私。今の所は、この近くの雑居ビルで寝ているよ」
 「雑居ビル?」


 栗崎が腑に落ちない、という顔をした。


 「運良く空室の鍵が、針金で開いたんだ」
 「管理人は来ないのか」


 「今の所は大丈夫。やばくなったら、また別の所を探すよ」
 「驚いたな。雑居ビルの空室がねぐらとは。若い女性が、ホームレスで生き続けている。何か、尊敬するよな」


 栗崎は郁の言葉を聞いて心底驚いた。


 「辛うじて生きているだけだよ。これでも、一応女性だからね。幾らなんでも、公園では野宿出来ないよ」
 「先輩、これからもご指導のほどを」


 栗崎が悪戯っぽい目をして、ぺこっと頭を下げた。






 
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