ヤサオトコ
「電気は点かないけど。外の灯りで十分に明るいだろ」
郁が薄暗い中で栗崎の顔を見た。
「今日は、まだ早いけど、いつもは11時頃にここには来るようにしているんだ」
「そうなんだ」
「その頃だと、このビルで灯りが点いているのは、4階にあるデザインスタジオ位だから。まあ、誰にも合う事は無い」
「用心しているんだ」
栗崎は郁のしたたかな生き方の1コマを、垣間見た気がした。
「そりゃそうだよ。生活が掛かっているからね」
郁は、そう言いながら部屋の隅に置いてあるカバンの所に行った。そして、中から寝袋を取り出した。
カバンの横には、畳んだダンボール紙が4枚。壁に立て掛けられている。