ヤサオトコ
「苦労しているんだ」
「親の無い子は悲惨だよ」
郁が本音を、思わず口から吐き出した。
「それから、ずっと、ホームレス?」
「うううん。パチンコ屋などで、住み込みで働いた事もあったよ。でも、これが、私には一番合っているみたい」
郁は栗崎を見て苦笑いをしている。
「あんたは?」
自分の事を余り語りたくないのか、郁が栗崎の事に話題を変えた。
「俺?俺は、つい最近まで普通の会社に勤めていたよ。そこを辞めてから、転々としている。階段を転げ落ちるように、落ちる所まで落ちたという訳。今日は、記念すべきホームレス生活初日なんだ」
「人間。落ちる所まで落ちれば、本当に楽だよ。自分に正直に生きられるからかな。これ以上落ちる心配も無いしね」
郁の瞳がきらり輝いた。郁の言っている事は、まんざら嘘でもないらしい。