ヤサオトコ
「盗みは駄目だよ」
「飢え死にしたって、もうしないから」
「約束だよ」
「約束するよ。晃司は堅物だから。私も右に倣えして、カチンカチンの堅物になってみせるから」
「なら、今回だけは、大目に見て上げる」
「よかった。元に戻せと言われたらどうしょうか、と思っていたよ」
郁は、本気で少し心配していた様子。
郁が気を取り直して、衣装ケースの上に掛けていたゴミ袋を取り外した。
中には、バッグと、何種類かのプラスチック製のケースが、綺麗に並べられている。
「これが、私の所帯道具。着替えとか、下着とか、いろんな物が入っているの。この上にバッグを置いておくの。晃司のバッグも入れて上げるわ」
「ありがとう」
栗崎が自分のバッグを郁に手渡した。