ヤサオトコ
「焦げうまのパンか。楽しみ。楽しみ」
「楽しみは、まだまだあるわよ」
郁が悪戯っぽい目をした。
「まだまだ、あるの」
「デパートが開店するまで、ちょっと時間を潰すから少し我慢してね。お楽しみは、それからよ」
郁と栗崎の二人は、地下街をぶらぶらして時間を潰した。
デパートの開店時間になった。
二人は、大阪北で一番大きなデパートのデパ地下へ。
「今からは、新婚のカップルを装うから、そのつもりで」
郁が、先輩風を吹かして栗崎に言った。
「それの方が何かとやり易いのよ」
栗崎は、黙って大きく頷いた。
先ずは、冷凍食品のコーナーで。
メーカーの販売員が、自社のハンバーグをフライパンで焼きながら、大きな声で宣伝を行なっている。