ヤサオトコ

 栗崎詣でをする中に、総務課の吉崎緑がいた。
 課長の田原は、ばつ一で、常々緑に好意を抱いていた。


 緑は昼休みになると、栗崎のもとにやって来た。そして、自家製の珈琲を栗崎に差し入れした。それも、ショートケーキ付きで。 


 田原は妬みに燃えた。
 その目に栗崎は気が付いた。


 慌てて緑からの差し入れを辞退した。が、それも後の祭り。
 田原の栗崎への妬みの火を消す事は出来なかった。


 「なぜ、普通に生まなかったのだ」
 「こんなに苦しめやがって」


 「畜生!」



 吊革にぶら下がりながら栗崎がぼやいた。


 座席に座っている女子高生が、驚いた目を投げ掛けて来た。
 栗崎はその目で我に帰った。






 
< 29 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop