ヤサオトコ

 冴もソファーの席に腰を下ろした。


 「最初は、北と南の2店でお店を始めたの。だから、中間点の本町にオフィスを構えた、という訳。でも、今じゃ京都、神戸、東京、名古屋、福岡。全国展開しだしたら、オフィスはここでなくても良くなったわ」


 冴が、事業の現状を淡々と語り始めた。


 「あなたに西日本を任せる事が出来れば、私は本格的に東京に進出する事が出来る。これからは、重点的に東日本を開拓したいのよ。そして、事業をもっともっと拡大したいのよ。ねえ、私の気持ち分かるでしょう」


 冴が、栗崎の目を見て同意を求めた。


 「・・・」


 栗崎は、何も答えなかった。


 「その為に、身も心も一心胴体になりたいのよ。あうんの呼吸で仕事が出来る、心底信頼できるパートナーになりたいのよ。ねえ、大人の関係になりましょうよ」
 「大人に関係に?」


 (やはり、そうだったのか。共同経営者だって。笑わせるな。ただの愛人じゃないか)


 栗崎は共同経営者の意味を、痛いほど噛み締めていた。







 
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