ヤサオトコ

 冴は信じられなかった。
 これだけの好条件に、尻尾を振らない男がいる事を。


 40過ぎと言えども、美貌と堅実経営で知られる美人経営者。そのパートナーになるのに、嬉しくない男がいる事を。


 何が不服なのか。
 どこに誤算があったのか。


 冴は自分と栗崎の言葉を反芻し、全身を頭にして考えてみた。
 皆目、分からない。


 分かっているのは、これほどの男を、易々と逃がす手は無いという事。
 逃がした魚は大きい。こんな事だけには、冴はなりたくなかった。


 (絶対に私のモノにしてみせるから。私を甘く見ないで。何が何でも、私の男にしてみせるから。覚えていなさい)


 冴は唇を噛んで、固く堅く心に誓った。






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