ヤサオトコ
足が知らず知らずにどこかに向っている。
気が付けば、栗崎は淀川大橋の袂に来ていた。
栗崎が橋の上から下を覗いてみた。
眼下には、住み慣れたダンボールハウスが横たわっている。
今は別の誰かが使っているのか、ダンボールハウスの横に洗濯物が掛かっている。
「それにしても、よくここから脱出出来たものだ」
栗崎は感慨深そうな顔付きで、ダンボールハウスを見詰めていた。
「あの時、ホストクラブに就職が決まっていなければ・・・」
栗崎は、考えただけでも身震いがする思いだった。
「ホストクラブは、俺たち三人を助けてくれた恩人とも言える」
「それを、共同経営者になるために、無下に辞めるとは言えないな。それも、愛人の立場でだぞ。プライドはどうした。ある。確かにある。断るか。そうしよう」
栗崎は、ダンボールハウスを見ながら独り言を呟いていた。そして、迷いに迷っていた共同経営者の件を、断る事にした。