ヤサオトコ
「妊娠は勘違いだった。嘘だろう。子供は出来ていない・・・。よく言うよ。では、あんなに頑張って来たのは、何だったのだ。子供の為だと思うから、自分を殺し、自分を騙し騙しやって来たというのに。これが、俺の運命。笑わせるなよ」
栗崎は、余りにも痛いパンチを喰らったような強烈な衝撃を受けていた。
湯船に入る気力も、栗崎には失せていた。
栗崎はまるで夢遊病者のように、ふらふらと浴室から出て行った。
「晃司、許して。お願いだから、許してよ」
後ろから、郁の声が栗崎を執拗に追い掛けて来た。
栗崎は、もう振り返る事は無かった。
「これが、俺の運命か。ふざけるな」
栗崎は普段着に着替えると、荷物をまとめ、そのまま家を出た。