ヤサオトコ
「もうちょっとで焼けるから待ってな。うちのは、飛び切りおいしんやから」
房江がたこ焼きをくるくる回しながら言った。
「それに、ビールも」
栗崎が注文の追加をした。
「お好み焼きも食べへんか」
「お好み焼きもされているのですか」
「夏場はかき氷もやってるで」
「いろいろされているのですね」
「そうせんと食べていかれへんからな」
「取りあえず、たこ焼きだけで結構です」
テーブル席に座っていた栗崎は、店内を見回した。
道路に面した所にたこ焼き器。
カウンター席が4席。
テーブルが2つあり、鉄板を敷いたテーブルの前に椅子が2席。
店には額入りの水彩画が、一枚だけ飾られている。