愛しい子
長い沈黙の中、私は必死に願っていた。
どうか、どうかこの子を……。
「……亜久里」
お父さんがゆっくりと、口を開いた。
「私はまだ、許すことはできない」
心臓がドクンと、大きく揺れた。
――ダメだった。
「……土曜に、連れてきなさい」
「え…?」
「相手の子とそのご家族を、土曜に連れてきなさい。みんなで話し合おう」
許しはもらえなかった。
だけど、少し。ほんの少しだけ、前に進めたみたいだ。
「あ、ありがとうございます!」
思わず立ち上がって、お父さんに頭を下げる。父さんは疲れきった顔をし、だけど薄く微笑んでくれた。
お母さんもお父さんと同じ意見みたいで、ホッとため息をついていた。
部屋に戻る。もう夜だ。
昼間に話し合いを始めてから、結構な時間が経っていたみたい。
私はベッドに体を沈め、すぐに寝ようと思った。
「……あ、ダメだ」
途中で加治のことを思い出し、携帯を手にする。
土曜に連れて来なきゃいけないんだった。今のうちに連絡しておこう。
だけど、電話をかける寸前で手が止まった。
恵里佳さんの話が頭をよぎる。
――まさか、加治も?
疑いたくはなかった。でも怖かった。
加治も今日話し合いをすると言っていた。もしかしたら親に説得されて……。
どうしよう、どうしよう。
裏切られるんじゃないかと、不安でたまらなかった。
「……あ」
ふと、無意識に触れていたお腹が、温かく感じた。
赤ちゃんが応援してくれてるような気持ちになる。
「……そうだよね、大丈夫だよね。貴方のお父さんだもの」
そっと赤ちゃんに語りかけ、深呼吸をする。
よし、もう大丈夫だ。
さっきまで鉛のように重く思えた携帯も、軽くなり、私は加治に電話をかけた。
どうか、どうかこの子を……。
「……亜久里」
お父さんがゆっくりと、口を開いた。
「私はまだ、許すことはできない」
心臓がドクンと、大きく揺れた。
――ダメだった。
「……土曜に、連れてきなさい」
「え…?」
「相手の子とそのご家族を、土曜に連れてきなさい。みんなで話し合おう」
許しはもらえなかった。
だけど、少し。ほんの少しだけ、前に進めたみたいだ。
「あ、ありがとうございます!」
思わず立ち上がって、お父さんに頭を下げる。父さんは疲れきった顔をし、だけど薄く微笑んでくれた。
お母さんもお父さんと同じ意見みたいで、ホッとため息をついていた。
部屋に戻る。もう夜だ。
昼間に話し合いを始めてから、結構な時間が経っていたみたい。
私はベッドに体を沈め、すぐに寝ようと思った。
「……あ、ダメだ」
途中で加治のことを思い出し、携帯を手にする。
土曜に連れて来なきゃいけないんだった。今のうちに連絡しておこう。
だけど、電話をかける寸前で手が止まった。
恵里佳さんの話が頭をよぎる。
――まさか、加治も?
疑いたくはなかった。でも怖かった。
加治も今日話し合いをすると言っていた。もしかしたら親に説得されて……。
どうしよう、どうしよう。
裏切られるんじゃないかと、不安でたまらなかった。
「……あ」
ふと、無意識に触れていたお腹が、温かく感じた。
赤ちゃんが応援してくれてるような気持ちになる。
「……そうだよね、大丈夫だよね。貴方のお父さんだもの」
そっと赤ちゃんに語りかけ、深呼吸をする。
よし、もう大丈夫だ。
さっきまで鉛のように重く思えた携帯も、軽くなり、私は加治に電話をかけた。