いつかの君と握手
警察が家に問い合わせても、6歳のあたしがそこにいるわけだし、両親は「うちにそんな娘はいません」で終了。
高校だって、生徒手帳は一応持ってるけど、在籍中のわけないし。
生徒手帳を偽造したと思われかねない。

っていうか、ここにあたしの戸籍はないんだから、めっちゃ不審人物になっちゃうではないか。


いや待てよ。
このままだと警察機関に引き渡されるだろう。
そこであたしが9年後の世界から来たと言ったらどうなるだろう。
困ってるんで助けて下さい! みたいな感じで。
信用しない、よね。頭おかしい子だと思われるだけかな。

いや、もし仮に信じてもらえたとしたら?
そしたら大変なことになるのでわ。

だってさ、未来を知ってるわけですよ。

これって貴重なはずで、あたしの存在って国家機密レベルになるんじゃ。
たいした知識はないけど、9年間で起こった事件は少しは覚えてるし。
些細なことだとしても、確かな未来を知ってるのって、すごいことでしょ。

VIP扱いになるんだろうか。預言者様ー、とか。

いや、どちらかというと、人体実験的な目にあわされるかも。
未来から来た構造を知る、なんてことでさ。

マッドサイエンティストぽい怪しいおっさんに、頭に色んな機械つけられて電気流されてびびびびびびびびび、みたいな。
こっち、ありえる気がする。


嫌だ! そんなの人生終わりじゃん!


「あ、あの用事があって学校を休んでおりましてですね」

「用事? ご両親はそれを了承しているのかな? 向こうの交番を借りて少し話をしようか」


あああああ、カバってば疑いの眼差し向けたままだ!
万事休す! あたしの人生どうなるの!?


「おねーちゃん、ここにいたの? 探したよ、早く行かなくちゃ!」

「へ?」


急に子どもの声がして、くいくいと服を引かれた。
見ればさきほど会話した男の子がいて、頬をぷくりと膨らませていた。


「ぼくに切符買いに行かせておいて、何してるのさ。あれ、この人は誰?」

「え? ええと」


どういうこと?
言ってることが理解できずぽかんとしていると、男の子はカバに訝しげな視線を向けた。


「ぼくのおねーちゃんがどうかしたんですか?」

「きみたち、姉弟かあ。二人してどこに行くんだい?」


カバが膝を折り、男の子に視線を合わせて訊いた。
すると、男の子は表情をさっと曇らせて俯いた。


「……ぼくたちのお母さん、びょうきでずっと入院してるんです。今日、ぐあいが悪くなったからってびょういんの先生から電話があって、これからおねーちゃんといっしょに行くところなんです」

「なんと……そうだったのかい」

「早くお母さんのところに行かないといけないんです。お母さん、きっとぼくたちを待ってるから。ぼく、お母さんのそばにいて、お世話するんだ……」


じわりと溢れた涙が、男の子の頬を伝った。
ぐい、と手の甲で拭っても、涙はどんどん溢れてくる。

ん?
服が引かれている。

男の子の涙に驚いていたあたしだったが、よく見れば男の子は涙を拭いながらもあたしにしきりと目配せしている。
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