いつかの君と握手
「あちゃー……。捕まったほうがよかったのかな。いや、人体実験は困るしなー」
「じんたいじっけん!? おねーさん、仮面ラ●ダーの仲間!?」
独り言は思いのほか大きかったらしく、男の子が素っ頓狂な声を上げた。
「あはは、いや、ライダーの仲間では……あれ?」
さすが男の子。発想がかわいいわー。
訂正をいれるついでに頭を撫でようとして、手が止まった。
男の子の顎の下に、ピンク色の傷跡があったのだ。
傷跡の新しさに差はあれど、それを持った人を、あたしは知っている。
まさかね? でも。同じなんだ。
「ね、ねえ、きみ、名前なんて言うの?」
「祈。加賀 祈(かが・いのり)だよ」
イノリって、やっぱ大澤の名前じゃん!
あれ、でも加賀? 大澤じゃないの?
目の前の顔をまじまじを見つめた。
大きな瞳に、血色のいい頬。
ちょこんとした鼻は鼻筋が通っているし、唇も形がよい。
少し右の口角があがっているのが、大澤と同じだ。
ていうか、よくよく見れば全体的に似てるんですけど。
面影ばっちり。
大澤の隠し子だと言われても、十分説得力あるくらい。
「イ、イノリくんって言うんだ。そっかー」
「うん」
こくんと頷く様子はすごく素直。
子どもとは思えない機転をきかせて助けてくれたことといい、本当にいい子だ、この子。
大澤によく似ているけど、やっぱり別人?
あいつはこんなにいい子じゃないでしょう。
でも、9年前だと6歳なわけで、ちょうどこのくらいなんだよなー。
それにいくら大澤でも、子どものころは素直だったのかもしれないし。
とりあえず、念のため、確認してみましょう。
「イノリくんさー」
「なあに?」
「苗字、大澤じゃない、よね?」
意識して穏やかに訊いたもりだったが、イノリは顔色を変えた。
「な、なんでそんな事訊くの?」
「えと、いや、なんとなくというか、うん。違うならいいんだけどね」
「違う! ぼくそんな名前じゃないよ!」
「ああ、それならいいのいいの。あたしの勘違いだし」
「ぼく、その名前嫌いなんだから!」
……えーと。こういうの、なんて言うんだっけ。
語るに落ちる? ちょっと違う?
「その名前、すごく嫌いなんだ! ぼく、おおさわなんて名前に絶対なんないんだ!」
「ちょ、ちょっと落ち着こうよ。ね?」
急に声を荒げたイノリに、周囲の目が向けられる。
騒ぎが大きくなれば、カバがやって来るかもしれない。それは非常にヤバい。
「あ、あっち行って話そう。ね?」
「じんたいじっけん!? おねーさん、仮面ラ●ダーの仲間!?」
独り言は思いのほか大きかったらしく、男の子が素っ頓狂な声を上げた。
「あはは、いや、ライダーの仲間では……あれ?」
さすが男の子。発想がかわいいわー。
訂正をいれるついでに頭を撫でようとして、手が止まった。
男の子の顎の下に、ピンク色の傷跡があったのだ。
傷跡の新しさに差はあれど、それを持った人を、あたしは知っている。
まさかね? でも。同じなんだ。
「ね、ねえ、きみ、名前なんて言うの?」
「祈。加賀 祈(かが・いのり)だよ」
イノリって、やっぱ大澤の名前じゃん!
あれ、でも加賀? 大澤じゃないの?
目の前の顔をまじまじを見つめた。
大きな瞳に、血色のいい頬。
ちょこんとした鼻は鼻筋が通っているし、唇も形がよい。
少し右の口角があがっているのが、大澤と同じだ。
ていうか、よくよく見れば全体的に似てるんですけど。
面影ばっちり。
大澤の隠し子だと言われても、十分説得力あるくらい。
「イ、イノリくんって言うんだ。そっかー」
「うん」
こくんと頷く様子はすごく素直。
子どもとは思えない機転をきかせて助けてくれたことといい、本当にいい子だ、この子。
大澤によく似ているけど、やっぱり別人?
あいつはこんなにいい子じゃないでしょう。
でも、9年前だと6歳なわけで、ちょうどこのくらいなんだよなー。
それにいくら大澤でも、子どものころは素直だったのかもしれないし。
とりあえず、念のため、確認してみましょう。
「イノリくんさー」
「なあに?」
「苗字、大澤じゃない、よね?」
意識して穏やかに訊いたもりだったが、イノリは顔色を変えた。
「な、なんでそんな事訊くの?」
「えと、いや、なんとなくというか、うん。違うならいいんだけどね」
「違う! ぼくそんな名前じゃないよ!」
「ああ、それならいいのいいの。あたしの勘違いだし」
「ぼく、その名前嫌いなんだから!」
……えーと。こういうの、なんて言うんだっけ。
語るに落ちる? ちょっと違う?
「その名前、すごく嫌いなんだ! ぼく、おおさわなんて名前に絶対なんないんだ!」
「ちょ、ちょっと落ち着こうよ。ね?」
急に声を荒げたイノリに、周囲の目が向けられる。
騒ぎが大きくなれば、カバがやって来るかもしれない。それは非常にヤバい。
「あ、あっち行って話そう。ね?」