ケータイ小説 『肌』 著:マサキ

同窓会のハガキに印をしないまま、私はデリバリーのピザを頼み、それで夕食を済ませ、自室のベッドに寝転がった。

近所の人と焼肉に行く予定は、その人の都合で延期になってしまったのだ。


なるべく考えないようにしていたのに、今日ばかりはマサキと過ごした日々のことを繰り返し思い出してしまう。


両親が仕事で家にいないのは昔からのことで、それに不満を感じたことはない。

生活のために働いてくれるんだから、せめて私は手のかからない子供でいよう。

幼い頃から、自分のことを深く考えないクセが身についていた。


無意識のうちに積もった長年の寂しさを癒してくれたのが、高校入学と同時に同じクラスになったマサキだった。

高校時代、マサキは何度かウチに来たことがある。

カップラーメンや冷凍食品、出前で食事を済ませていた当時の私は、よく、マサキに怒られていた。

「若いうちからそんな生活してたら、いつか体壊すぞ!」

同い年のクセに、親戚のおじいちゃんみたいなことを真顔で言うマサキに、私は思わず吹き出したっけ。

ズボラでめんどくさがりの私は、マサキと過ごすうちに、手料理を作ってみる気になった。

失敗してこげたホットケーキ。

生焼けのピーマンが入ったオムライス。

煮込み過ぎて味の濃くなったみそ汁。

冷蔵庫の中で放置しすぎてしおれてしまったほうれん草で作った、ソテー。

どれも、おいしいとはいえない失敗作ばかりだったのに、マサキと一緒に作る手料理はおいしくて、なにより、楽しくて。

初めて、もっと上達しなきゃ!と思えた。

自炊の楽しさを知った。

デートのたびに料理本を買いあさった。


でも、マサキと別れてから、私はまた、インスタント食品愛用者に戻ってしまった。

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