The world is changed story
魔物と声の主の男の子、両方が一気に私の方を向いた。
まあ、当たり前なんだけど。
「下がってて。」
私は一言だけ彼に告げて、彼に防御魔法をかける。
そして手に剣をぎゅっと握り、人型の魔物の心臓めがけて突き刺す。
…やっぱり、人型の魔物は苦手だ。
体を刺せば血があふれ、…いや、血ではないか。
血のように見える人の涙があふれ、それは飛沫となって私にかかる。
心臓を殺(や)らなければ人型の魔物は死なない。
自分が人殺しをしているような感覚になる。
ぐっ、と手に力を込めれば、石を割っているような感触。
これは人のように柔らかくない。
殺すことで負の感情から解放できるんだ、と思い込んで剣を引き抜く。
「おいっ、左だ!」
雪のように砕けて空に吸い込まれる、
自分が殺した魔物から目をそむけていると声が聞こえた。
反射で左を見れば、大きな口を開いたグロテスクな魔物が。
否、これは魔物じゃなくて怨霊のなれの果てだ。
こういう悲しみそのもののようなのを殺すのは心が痛い。
けれど、殺さなければきっとそれらはそのまま泣き叫び続けるんだろう。
「ごめんなさい…、」
小さくつぶやき、魔法で剣にヴェールをかぶせる。
そして軽く首元を刺すと、そこから感情が具現化したものが染みだす。
何度見ても、なれることなんかできない。