The world is changed story
「えー…、と、それじゃあ、夜ごはん一緒に食べません?」
ああ、言ってしまった。
両親が亡くなって、一人で暮らすようになってからというもの、
家に誰かをあげた事なんかなかった私が。
「それじゃあ俺のお礼にならないけど…、いいんだったら。」
森の中でも、緑の風は気持ちがいい。
私はこの森が好きだ。
毒のある蒼の草も好きだ。
だから、何故あんなに綺麗なのに毒を持っているんだろうかと思う。
きっと、綺麗だって摘まれて、仲間がいなくなっちゃうのが寂しかったんだ。
小さい時に考えてたどり着いた答え。
久しぶりに、誰かと並んで歩く。
落ち着かない、不思議な気持ち。
静かな沈黙が続くけど、
鳥とか虫も鳴いてて、重苦しくはない。
「あの透明な蒼の綺麗な草、持って帰りたかったんだけど…、」
帰り道に咲いていた蒼の草を見て、彼は呟いた。
…私も一度、どうにか持ち帰ろうとした事があったっけ。
「やっぱり、あの草に触れたんですね。」
ジャリ、と歩く音に耳を澄ませながら私は言った。
この人の歩き方は、優しい人の歩き方だ、って思った。
なんとなく、なんとなくだけど。