The world is changed story





「えー…、と、それじゃあ、夜ごはん一緒に食べません?」



ああ、言ってしまった。

両親が亡くなって、一人で暮らすようになってからというもの、

家に誰かをあげた事なんかなかった私が。



「それじゃあ俺のお礼にならないけど…、いいんだったら。」



森の中でも、緑の風は気持ちがいい。

私はこの森が好きだ。

毒のある蒼の草も好きだ。

だから、何故あんなに綺麗なのに毒を持っているんだろうかと思う。


きっと、綺麗だって摘まれて、仲間がいなくなっちゃうのが寂しかったんだ。

小さい時に考えてたどり着いた答え。


久しぶりに、誰かと並んで歩く。

落ち着かない、不思議な気持ち。


静かな沈黙が続くけど、

鳥とか虫も鳴いてて、重苦しくはない。



「あの透明な蒼の綺麗な草、持って帰りたかったんだけど…、」



帰り道に咲いていた蒼の草を見て、彼は呟いた。

…私も一度、どうにか持ち帰ろうとした事があったっけ。



「やっぱり、あの草に触れたんですね。」



ジャリ、と歩く音に耳を澄ませながら私は言った。

この人の歩き方は、優しい人の歩き方だ、って思った。


なんとなく、なんとなくだけど。




< 9 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop