モラルハザード
薫さんの回りくどい言い方を聞く私の表情はかなり険しいことだろう。
「…でね、杏子さん、だから、普通には入れないものを、入れてもらうには…」
「いくら必要だとおっしゃるの?」
薫さんの話を遮り下衆な物言いをした。
でも、要はこういうことなのだ。
「…杏子さん、いやだわ、いくら、とか、そんな露骨な話し…」
薫さんは眉をひそめた。
「薫さん、私は莉伊佐のためなら、露骨な話しだって、何だってするわ。
お金が必要なら、必要な額を言っていただきたいの。いくらであっても
お支払いするつもりよ」
キッズスペースで泣き声がして、薫さんと私はそちらに目をやった。
泣いていたのは、莉伊佐でも陽太くんでもなく別の子だった。
私と薫さんはそのことに安堵し、張りつめていた少し気持ちを少し緩めた。