モラルハザード

「みんな、金のためですよ。森川に金を盗られて、俺らがどんなに苦しんだか、

あんたわかるか?え?どんなに人の人生狂わせたか、あんた、わかるか、え?」

太田が大きな声で言い放ち、その声に驚いた向日葵がしがみついてきた。

小さな体を震わせている。

私は向日葵をしっかり抱き寄せた。


「それで、いったん、森川を警察から出し、有り金を全部、銀行から

出して…ほれ、こんなにありましたよ」

今度は右田が代わって話しだし、テーブルに札束の入ったバックをドサッと乗せた。

「右田さん、ありがとうございます。これで、取引先のやつらに少しは返金してやれます。

残りの金と、こいつらがどうなろが、は、私が知ったことじゃありません。

後は煮るなり焼くなり好きにして下さい」

太田はそう言って、ぐったりとしている陽介に唾を吐いて出て行った。



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