【砂漠の星に見る夢】
なにこれ、この天も地もないみたいに目眩がする。
これは一体何なの?
顔を歪ませ、額を抑えていると、「ヘレス様のおなりです!」という侍女の声が耳に届いた。
その瞬間、部屋中に緊張の空気が走り、侍女達は一斉に跪いた。
……ヘレス様ってクフ王子の母親の……あのヘレス第二王妃?
どうして、私のところに?
イシスは頭を抑えながら、とりあえずソファーから下りて、侍女たちと同じように跪こうとしたが、なぜか体が動かなかった。
ど、どうして体が動かないの?
全身に力が入らない。
体の自由が利かないことに気付いたときには、目眩は治まっていた。
困惑の表情を浮かべるイシスの前にヘレスが立ちふさがり、ほぉ、と見下ろし、顎をつかんで、まじまじと見つめた。
一体なに?
と顔をしかめると、ヘレスは楽しげにクックと笑った。
「イシスなどと大層な名を持つ娘だと思っていたら、なるほど、これは美しい」
そう言って優雅な笑みを浮かべるヘレスに、イシスは戸惑いの表情を見せた。
「イシス、そなたはこれから偉大な者の妻となります」
見下ろしながら、強い口調でそう言ったヘレスに、イシスは目を開いた。
ヘレス第二王妃がネフェルのことを『偉大な者』と言うなんて。
意外に思っていると、ヘレスはその心中を察したかのように高らかに笑った。