【砂漠の星に見る夢】
「そんな……イシス様」
「マヤったら、私に『様』はいらないわよ。何度も言わせないで」
イシスは優しくそう告げたあと、「少し、休むわ。あなたも休んで」そっと目を閉じた。
マヤは小声で「はい」と頷き、ゆっくり部屋を出ると扉の外の番人カイは、心配でたまらないかのように「イシス様は?」と身を乗り出した。
「……相変わらず食事を摂ろうとしません。このままでは本当に心配です」
痛々しくそう告げたマヤに、カイは、ああ、と額を押さえた。
「ネフェル様なら、イシス様をお助けすることができるのかもしれないのに」
その言葉にマヤが驚いたように顔を上げると、カイは、しまった、と口を噤み、バツが悪そうに目をそらした。
「……今のは聞き流してほしい」
するとマヤも目をそらしながら、小声で囁いた。
「私がこれから話すことも聞き流してほしいのですが、ネフェル様に会わせることができたら、と常に思っていました」
カイはゴクリと息を呑み、「今、ネフェル様がここに訪れたならば、俺は見て見ぬ振りをしてしまうかもしれない」と小声で呟いた。
「……クフ王子は、今夜は来られないはず……」
マヤはそう漏らし、意を決したように顔を上げ、駆け出した。