【砂漠の星に見る夢】
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ネフェルは自室で一人、物思いに耽るように窓の外を虚ろな目で見下ろしていた。


ヘムオンはつつがなく成長し、ターナも落ち着きを取り戻し始めている。


このまま今まで通り妻と子を慈しんで過ごすことこそが大事だと知りながら、時が経てば経つほどに想いは募のる。


―――イシス。


これからも宮殿で彼女を見ることがあるだろう。


その時に自分は衝動を抑えられるのだろうか?


平気な振りなどできるのだろうか?


重苦しい息を吐き出し、額を押さえたとき部屋をノックする音が響いた。


ネフェルはこんな時間に誰が?


と眉をひそめながらも「どうぞ」と声をかけると、イシスの侍女・マヤは恐縮そうに扉を開け、「失礼いたします」と一礼した。


マヤは顔を上げるなり、間近で見たネフェルの姿に思わず息を呑み込んだ。


今までも宮殿で見かけたことがあったが、これほどの至近距離で対峙したことはなかった。


美しい金髪に、艶のある褐色の肌、宝石のような緑の瞳。


―――なんて美しい王子だろう。



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