【砂漠の星に見る夢】
「――それはクフも同意していることなのか?」
「いいえ。クフ王子はへレス様に窘められ、最近は第一王妃や第二王妃の元に通っておられます。今晩はイシス様の元に訪れることはないでしょう。……私がここに訪れたことをクフ王子に知られたら大変なことになるのは分かっております」
マヤはそこまで言って息をつき、
「ですが、このままではイシス様が死んでしまいます。あなた様でなければ駄目なんです」
と強い眼差しを向けた。
ネフェルはマヤを見詰め返しながら、まるで死を覚悟しているような強い瞳に胸を打たれた。
例えクフやへレスの陰謀だとしても、彼女のこの強い眼差しを信じた自分に悔いはない、と強く頷いた。
「わかった、君を信じるよ、マヤ。それでイシスは、どこに?」
「東の離宮の塔の上です。番人にも話は通してあります」
「分かった、君はこのまま一人で戻るように。……僕と一緒に歩いている姿を見られると、立場が危ういはず」
ネフェルは優しくそう言い、マヤの肩に手を乗せた。
「お気遣い、ありがとうございます。それではわたくしはここで失礼致します」
マヤは頭を下げ部屋を出ようとし、脚を止めて振り返った。
「ネフェル様、あの……」
「なんだい?」
「イシス様はご両親を人質に捕らえられています」
すべての事情を含んだマヤの言葉に、ネフェルは目を見開いた。
「――なん、だって?」