【砂漠の星に見る夢】

そうだったのか。


クフは彼女両親を人質に取り、縛り付けていたのか!


彼女は親を思い逃げることもできずにいたなんて、それが愛する者に対してする行為だというのか!


クフに対する怒りで全身が震えてくる気がした。


マヤはもう一度ネフェルに頭を下げ、部屋を後にした。


マヤが部屋を出て行った後、ネフェルは今までの自分を恥じるように顔を歪ませて、壁に拳を叩きつけた。


イシスはこんなに近くにいたのに、そんなことも気づかず自分は妻をめとり、子を儲けていた。


生涯の妻と心に決めた人が、想像を絶する苦しみの中にいたというのに。


どんなことをしてでもクフの元には置いてはおけない。


しかし今やイシスは弟の妻……。


どんな方法で娶ったにしろ弟の妻であることには変わりなく、イシスを奪うことは許されないこと。


『あなた様が彼女をさらって、どこかに行ってしまうことが怖くてたまらないのです』


ネフェルはターナとヘムオンの姿を思い浮かべ、弱ったように額に拳を当てた。



しばし目を閉じたあと大きく息をつき、何かを決意したように強い眼差しで顔を上げた。
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