【砂漠の星に見る夢】

前を歩く雄太は「すごいなぁ、盗賊団になった気分だ」と楽しそうに洩らす。


「天井は低いし、通路は狭いし、閉所恐怖症の人には絶対無理そう」


「それに、すごい湿気なのねぇ」


意外そうに呟く母の横で、父は相変わらず、「いやぁ、すごいな」と連呼している。


「皆さん、こちらが王の間です」


ガイドの言葉に『王の間』と呼ばれる部屋に辿り着いた。


「小さくて何もない部屋」


思わずそんな言葉を零した。


「そうなんです。皆さんそう仰いますね。王の間の中は幅5メートル、奥行き10メートル、高さ6メートル程の長方形の部屋に石の棺があるだけの部屋なんですよ」


観光客達はそのシンプルな空間を見渡して、


「これが王の間か」


「まぁ、何もないとは聞いていたけどね」


と拍子抜けしたような声を上げている。



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