【砂漠の星に見る夢】
そんなある日、宮殿の通路内でヘレスはターナとすれ違い、へレスは自分に頭を下げるターナを見て、クスクス笑った。
「そなたは、イシスの元に怒鳴り込んだそうですね」
その言葉にターナは耳まで赤くさせたあと、ネフェルに捨てられるかもしれないという不安から、噴き出すように涙を流した。
「へレス様……。わ、私、どうにかなってしまいそうです。宮殿の妻は皆こんな思いをしているのでしょうか?」
そう言って膝をつき、口に手を当てて涙を流すターナを見下ろし、へレスはまるで全身雷に打たれたような衝撃に襲われた。
これだ、今しかない!
へレスは興奮する気持ちを隠しながら、優しくターナの肩に手を乗せた。
「そうですね。宮殿の妻はつらいものです。ですが私はあることをした為に、ファラオの寵愛を惜しげもなく受けることができたので憂いはありませんでしたよ」
「あることとは、どのようなことでしょうかヘレス様」
藁をもすがりたい気持ちですがるような目を見せるターナに「おやおや、お立ちなさい」とへレスはターナを立たせ、そっと懐から小瓶を取り出した。
「私の家に代々伝わる秘薬です」
「……薬、ですか?」
「そう、殿方の愛情をゆるぎないものにする薬です。それをあなたに差し上げましょう」
そう言って小瓶をターナに差し出した。