【砂漠の星に見る夢】
少し前までは、いつも賑やかで活気のある美しい町だった。だが今は閉店する店も多くなり、町全体が閑散とした雰囲気に包まれ、柄の悪い連中が多く見受けられるようになっていた。
「これは、ナイル川が氾濫しなくなったからだよ」
難しい顔でそう告げたヘムオンに、ジェドはポカンと目を開いた。
「ナイル川が氾濫しないと、どうして町に活気がなくなるの? 川が氾濫したら皆困るのに?」
「本当にジェドは何も知らないんだなぁ。
お前はクフ王の息子、つまり未来のファラオになる可能性があるんだぞ。もっと、この国のことを勉強しろよ」
ヘムオンが呆れたように息をつくと、ジェドは屈託のない笑顔を見せた。
「万が一、僕がファラオに即位したら、すぐにヘムオンにバトンタッチするよ。僕にはファラオなんて無理な話だし」
「あのなぁ」とヘムオンが呆れ顔で呟くと、ジェドは笑顔で続けた。
「だって、ヘムオンは父上のお兄さんの子なんだろ?本当ならファラオになる人の子供だったんだろ? だからヘムオンがファラオになるべきだよ」
「……世の中そう上手くはいかないんだよ。それに僕はファラオなんかになって、この国に縛られたくはない」
眉間に皴を寄せるヘムオンに、ジェドは身を乗り出した。