【砂漠の星に見る夢】

「それよりナイル川のこと教えてくれよ。氾濫するのがどうしていいの?」


「ああ、確かにナイル川が氾濫すると、民衆のほとんどが失業状態となる。それも確かに対処しなければならないことだけど氾濫は必要なんだ。
その水の恵みを持って土地が豊かになり農作物が豊作となる。食物が豊富に作られるということは家畜も肥え人々の食生活が豊かになる。
そして商売も流通する。それはつまり経済が発展するということだ。

だけど、もうずっとナイル川が氾濫せず、その水の恵みを受けていない。土地は痩せて作物は不作続き、経済が動かず食べ物に飢え、そう、エジプトに飢饉が訪れつつあるんだ」


「でも、宮殿にはそんな緊迫した雰囲気はないよね?」


そんなに大変なことになっていたなんて、と顔をしかめるジェドに、ヘムオンは皮肉めいた表情を見せた。


「宮殿には想像を絶する財産があり、外国の物資も簡単に手に入れることができるし、食物も豊富に貯蔵してある。だから国民が飢饉に苦しんでいても、宮殿ではどこ吹く風ってところなんだ」


「そんな……」


ジェドは悲しそうに眉を下げた。


「ジェド、君からファラオに頼んでくれよ。この飢饉をなんとかするように」


そう告げたヘムオンに、ジェドは俯きながら首を横に振った。


「―――今の父上は、誰の言葉にも耳を貸さないよ」


ヘムオンは苦々しい表情を浮かべ、そうだよな、と呟いた。


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