【砂漠の星に見る夢】

元々、温厚だったクフだが、ファラオ即位後は人が変わったように人の意見に耳を貸さず、ただ贅に限りを尽していた。


そんなクフを窘める者もなく、かろうじてイシスの言葉に耳を傾けることはあったが、捻くれた彼は、今や手がつけられない状態にあった。


「ヘムオンが父上にお願いしてよ」


ジェドが名案とばかりに明るく顔を上げると、ヘムオンは露骨に顔をしかめた。


「冗談だろ? ファラオが僕を嫌ってるの知ってるだろ」


「嫌ってなんかないよ。前に父上、ヘムオンのことをニコニコ笑いながら、見てたことがあるんだ」


「どう焼いて食ってやるか考えてたんじゃないのか?」


ヘムオンが吐き捨てるように言うと、ジェドは悲しい表情を見せた。


その姿にヘムオンは、さすがに言い過ぎた、とバツが悪そうに頭をかき、「ごめん、悪い冗談だよ」とジェドの肩を抱いた。


「うん、分かってるよ」と笑顔を見せた瞬間、大柄の町男がジェドのフードをつかみ、持ち上げた。


「こいつは、身なりのいいガキだ。ふんじばって身代金でもふんだくろうか」


ジェドは大男に猫のように持ち上げられ「やめろよ、離せ」と手足をバタつかせた。


「おい、男!」


強い眼差しで睨みながらそう声を上げたヘムオンに、男は「なにぃ?」と顔を上げた。
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