【砂漠の星に見る夢】
「ったく蹴った糞悪いぜ」
とブツブツ言いながら立ち去ろうとする男に、
「そなたは恵まれた体格を持ちながら、なぜ、くだらぬことを企む?」
と告げたヘムオンに、男は堪忍袋の緒が切れたように、ゆらりと顔を上げた。
「生意気言うな、このガキが! 俺は大工なんだ! でも今は不況で仕事もなく明日食うのも危うい毎日だ!こんな状況なら家族を食わす為に手段を選ばねぇって気持ちにもなるぜ!」
その言葉に居合わせた町の者たちも、「そうだ、そうだ」と声を上げ、ヘムオンの陰に隠れるジェドに向かって叫び始めた。
「あんた、王子様なら、なんとかしてくれよ!」
「明日の食べ物もないんだ!」
「ファラオになんとかいってくれよ!」
ワイワイと詰め寄り口々に不満をぶつける民衆に、ジェドは「そ…そんな」と怯え、目に涙を浮かべた。
このままなら暴動が起きるな……。
そう感じたヘムオンは深呼吸したあと、道端に放置していた大きな木箱の上に、ひょいと飛び乗り、かぶっていたフードを勢いよく脱いだ。
あらわとなったヘムオンの輝くような金髪と美しい緑の目を見て、民衆は思わずどよめいた。
「ネフェル様にそっくりだ」
「そうだ、ネフェル様だよ」
民衆の言葉にヘムオンは、「ネフェルは私の父。私は息子のヘムオンだ!」と胸に手を当てて叫んだ。
「ネフェル様の……?」
戸惑う民衆の反応を無視し、ヘムオンはサッとジェドを指した。