【砂漠の星に見る夢】

それが……だって? 


民衆があんなに苦しんでいるのに?


「お聞き下さい、ファラオ。民衆が苦しんでいます。
この王室の財産を持ってすれば、飢饉を乗り切ることができます。お願いです、民衆を救ってもらいたいのです」


そう切に訴え身を乗り出したヘムオンの姿を見下ろし、クフは顔を歪ませた。


「……王室の財産は、王室のものであろう?」


「えっ?」


「民衆は民衆で、自分で蓄えた財産でなんとかするがよい。メンフィスの町も必要以上に人口が増えたと訊く。これはいい間引きになるではないか?」


「な、なんてことを……」


呆然と目を開いたヘムオンに、イシスは切なく目を細めた。


「ファラオ、一体、どうしてしまわれたのですか? あなた様はとてもお優しい方ではありませんか」


その言葉にクフはグッと息を詰まらせ、


「私は疲れた。もう下がる」


と声を上げて若く美しい侍女たちと共にホールを後にした。


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