【砂漠の星に見る夢】
「……私は何度も敬語も敬称もいらないといっているのに、あなたはいつまでも私のことを『イシス様』と呼ぶから、少し寂しい思いをしてきたのよ」
その言葉にヘムオンはグッと俯いた。
「……昔、ヘレス様に言われたんです。
ファラオのお妃様であるイシス様と僕では身分が違うから常に敬語を使うようにと、優しくしてくれたからといって思い上がらないように、と強く窘められたことがあったのです」
「そうだったの、それは可哀想に……。
身分が違うだなんて世が世ならあなたはファラオになることを約束された方。それこそ鍛冶屋の娘だった私とは身分が違うわ。何より人はどんな家に生まれつこうともどこに嫁ごうとも身分なんて関係ないの。皆、平等だと私は思うわ」
イシスはそう言いながら、ネフェルのことを思い浮かべた。
王子でありながら気取らず気さくで民衆と一緒になり、皆で笑い合ってピラミッドを建造したネフェル。
町娘である私を少しも蔑むことなく平等に扱い、愛してくれた。
彼は生まれついての王子でありながら、人は皆平等であることをその身を持って教えてくれた。
イシスは、そんなネフェルそっくりのヘムオンを優しく見つめ、頬にそっと手を当てた。
驚いたように顔を上げたヘムオンの大きな緑色の瞳は、涙に潤んでいた。