【砂漠の星に見る夢】
「ヘムオン、私はあなたをずっと息子だと思ってきたのよ」
ヘムオンは泣き出しそうになるのを堪え、唇を噛んだ。
「僕は……僕も、もうずっとイシス様を母上と呼びたかったです」
そう言って俯き、膝の上でギュッと握ったまだ小さな拳が小刻みに震えていた。
イシスは女神のように微笑み、優しくヘムオンの柔らかな金髪を撫でた。
「今からでも、遅くはないわ。私もあなたに母と呼ばれたい」
ヘムオンは堪え切れなくなったように、イシスに抱きついた。
「母上……母上!」
イシスも目に涙を浮かべながら、ヘムオンの幼い体をしっかりと抱きとめた。
聡明で堂々とし、天才と呼ばれるヘムオンも、まだ十一歳の幼子なのだ。
父も母もなく育ち、私を母と呼びたくとも周りの者に窘められ、それを呑み込んで生きてきたのだ。
イシスはヘムオンの頭を撫でながら、胸が詰まされるような気持ちになっていた。
ヘムオンはしばしイシスにしがみついて泣き、ようやく落ち着いたようにゆっくり離れ、手の甲で涙を拭い、深呼吸した。
「……もう少し聞きたいことがあるのですが、父が前ファラオの為にピラミッドを建造した際に多くの民衆の手を借りたというのは本当ですか?」
予想もしなかった質問に、イシスは戸惑いながら、「ええ、そうよ」と頷いた。
「それで、どのくらいの時間をかけたのでしょうか?」
「三ヶ月よ」
その言葉にヘムオンは目を丸くした。
「三ヶ月? そんな……信じられない」