【砂漠の星に見る夢】
ただ驚き、そして喜びを隠し切れないクフの様子を見て、イシスの胸は痛んだ。
―――この人はこの人で、ずっと苦しんできたのだろう。
愛せないのは罪なのだろうか?
迫るような息苦しさに、イシスは切なく目を細め、
「失礼します」と、クフの隣に腰をかけた。
何事か、とばかりに目を開くクフに、
「今日はファラオのお話を聞きに来ました」
とイシスは漏らすように呟いた。
「……話?」
「はい、あなたの妻になり、もう15年以上経とうというのに、私は一度もあなたの言葉に耳を傾けたことがないような気がして……かつてのあなたは優しい方だったのに今どこかすさんでいられるのは、私のせいのような気がしまして……」
イシスがそこまで言うとクフは目を見開いたあと、愉快そうに笑った。
「それはそれは、あなたも大層自惚れている。
私がすさんだのは別にあなたのせいではない。確かに、どんなに愛しても愛してもらえぬ苦しさは常にあったが、私が何もかもどうでも良くなったのは民衆や家臣たちのせいだ」
クフはそう言って遠い目を見せた。
「民衆や家臣たちのせい?」
「私は、もう疲れた……」
そう言ってクフはベッドに横たわった。