【砂漠の星に見る夢】

「父と僕は似ていますか?」


そう言って見詰めたヘムオンに、イシスはクスリと笑った。


「外見はよく似ているけど中身はやっぱり違うわ。
ネフェルは11歳のあなたより『少年』のような人だったもの。天真爛漫で明るくて」


イシスはそういったあと、そっとヘムオンの頬に手を触れた。


「ヘムオン、あなたは甘えられる人がいなくて、早く大人にならざる終えなかったのね。
宰相となり責任も背負ってしまった今、あなたは、ますます大人になるしかなくなってしまったけど、どうか私の前だけでは、子供の部分を出して欲しいと願うわ」


優しいイシスの言葉に、ヘムオンは戸惑いの表情を浮かべたあと、ゆっくり頷いた。


「僕はあなたを母と呼ぶことができるだけで、この上なく幸せです」


ヘムオンはそう言って、美しい緑の瞳を潤ませた。


「私もあなたのような息子を誇りに思うわ」


イシスはそう言ってヘムオンの額に優しくキスした。


「そうそう、ジェドをどんどん手伝わせてちょうだいね。あの子はあなたの弟よ。気にせずに、使ってちょうだい」


「母上に言われるまでもなく、ジェドは勝手にやって来て、勝手に手伝ってますよ」


そう言ってピラミッドの土台の前で、民衆と共に右往左往するジェドを指したヘムオンに、イシスはクスクス笑い、「ジェド」と手を振った。


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