【砂漠の星に見る夢】
「そなたはどうして幸せと言い切れる!
愛する男と結婚する前夜に無理やり他の男の妻となり監禁生活を続け、愛する男を目の前で亡くし。その後は、注目を浴びたくないと、まるで世捨て人のように宮殿の隅でひっそりと生活しているそなたがどうして幸せと言い切れる!
こ の世界のすべてを手に入れたこの私が毎日不安で、いつどんな方法で殺されるか不安で、近付く者すべてが敵に見えて、夜はもう薬を飲まなければ寝ることもできず、その薬ももう効かなくなり最近は聞こえぬはずの声まで聞こえ、狂いだしそうだというのに、そなたはどうして幸せと言い切れるのだ!」
ヘレスはそう叫び、泣き崩れた。
「ヘレス様……」
「殺らなければ殺られるのだ。私の軍隊を……」
自らの頭をかきむしりながらそう言うヘレスに、イシスは苦しさに目を細めた。
この方はこの宮殿で権力の頂点に立つことだけを考え、生きてきたのだろう。
しかしすべてを手に入れた時、そこは地獄のような場所だったことに気付いたのだ。
イシスは優しくヘレスの肩に手を乗せたその時、「失礼します!」と大神官の遣いが姿を現わし、
「皇太后様、大神官様がホールにてお待ちです」と声を上げた。
その言葉にヘレスは息を呑み、胸元からハンカチを取り出して涙をグイッと拭い、イシスを見据えた。
「イシス……そなたが、本当に何があっても何もかも許せるのか見てみたいものです」
ヘレスはそう言って口端だけで笑い、イシスの部屋を後にした。